その台風が直撃する前日18時の東京駅。
東海道新幹線の改札口は、乗客でごった返していた。翌日は東京〜名古屋間で終日運休することがJRから発表されたためである。
おれが新幹線改札付近に着いてから20分後、ようやく博多行き「のぞみ」指定席車両のデッキに飛び乗った。
帰省ラッシュ以上の混雑だったが、乗客はさまざまな理由で「新幹線に乗らねばならない」理由があるはず。
おれがこの列車に乗っている理由は、「5部リーグに所属するサッカーチームの応援がしたい」からである。他の人が聞けば、馬鹿げていると思うだろう。
結局、途中の広島まで4時間半は立ちっぱなし。
終点の博多には25分遅れで着いた。出発から5時間半が経っていた。東京駅の大混乱を思えば、よくぞこの程度の遅れで済んだと思う。
この日は、博多のカプセルホテルに宿泊。なのだが、とても疲れていたため、ラーメン1杯すら食べず、すぐに就寝。
翌日は、24時間営業のうどん店に寄ってから、
6時45分の新幹線に乗車。
1時間40分後、新幹線の終点・鹿児島中央駅に着く。
ここで、前日から鹿児島に入っていた浦安ファンが乗っているレンタカーに合流。
おれは、夏用のYシャツ・ネクタイで髪はオールバックという格好にも関わらず、快く迎え入れていただき感謝。
そこから車を走らせること2時間。
ようやく志布志市しおかぜ公園に到着。強風。日差しがキツい。少し暑い。
まずは、屋台村で売っていた「地鶏の炭火焼き」を食す。
味の感想は、いうまでもないだろう。
他にも水出し茶を飲み、フランクフルトを食べながら、JXTG水島 vs 中京大学FC の試合を観る。
JXTG水島の温かいファンと、中京大学FCのハードワーク&ライン統率が目立つ一戦だった。
お互いにファールが少なく、気持ちよく観戦できた。
試合終了直後、指定されたテントに行けば、「ふるまい」で観客に黒豚丼が提供される。
宮崎や鹿児島は、食べ物のおいしさが日本屈指だ。
黒豚丼を食べた後は、「観戦モード」から「参戦モード」にシフトチェンジ。
先述の格好に加え、フチなし眼鏡をつける。浦安の子どもたちはいないので、遠慮なく応援するつもりだ。(浦安から来た声出しファンは約6名。宮崎から都並監督のファンも来てくれた)
今日の全社本戦1回戦、ブリオベッカが対戦する相手は、かなりの強豪。
・チーム運営費(人件費)
・地元自治体からのバックアップ
・地元マスコミの露出
これらは、Jリーグクラブ並み。そんなチームが相手だと、燃えるものがある。
だが、選手入場直前に想定外の事態が起こる。
大会スタッフの方が、先ほどの黒豚丼をデリバリーでおかわりを持ってきてくれた!
しかし、これから「参戦」する立場なので、ありがたいと思いつつ固辞する。
そして、選手入場。FIFAアンセムが流れたので、浦安ファンはアカペラで合唱して乗っかる。
選手コールを一通りやった後、キックオフまで1分以上余ったので、今度は「君が代」斉唱。ここまでは、やりたい放題。
キックオフしてからは、いつも通りの応援に戻す。なのに、ピッチ上では、浦安の選手が混乱していた。
守備的な戦術を取ったにも関わらず、相手チームの攻撃に全く対応できない。
ボールがラインを割った直後は、選手同士で意思疎通を図る。それも叶わず、浦安の左サイドを割られて、先に失点を喫する。
失点しても、守備陣は混乱している様子だったが、GK南翔太やCB山崎紘吉の「精神的なコーチング」で少しずつ落ち着きを取り戻す。
攻撃陣は、得点できる気配もなかった。特に、小島樹は徹底的なマークを受けていた。ファールを受けたとき、おれは「ぶ〇く〇〇ぞ!」と怒鳴った。おれの格好が特徴的だったこともあり、観客席が一時的に凍り付いた。
その小島が前を向いたとき、チャンスが生まれる。
小島が左サイドに展開し、菊島が突破を一呼吸だけ遅らせ、相手をかわす。クロスに反応したのは秋葉。見事なゴールで浦安が同点に追いつく。
志布志でも、エレクトリカルパレードだ。
このゴール以降は、短い時間の膠着状態に入る。相手は、長いボールを浦安の左サイドに入れる。個人技で突破したい意図が見える。浦安は、パス交換で決定機を伺う。
小島が相手ボランチを背負いながら、超絶スルーパスを相手CBの間に入れる。
桜島出身の名手(ガンバの遠藤保仁)を思わせるような完璧なパスだったするが、このチャンスを逸する。
チャンスを逸したことにより、流れは相手に渡ってしまい、またしても、左サイドに起点を作られ失点してしまう。
(今期の試合は、左サイドを突破されるシーンが散見する。相手の右サイドに攻撃が秀でた選手が多かったのだろう。しかし、今年の浦安にはそんなタイプがいない。欲を言えば、右サイドを個人技で崩せる選手がほしい。)
勝ち越された浦安だが、攻勢に出ることはせず、40分ハーフの前半は終了。
ここで、都並監督が動く。交代は5人まで認められていることもあり、カードを2枚切る。植田と竹中を投入。
早速、竹中がパワフルなシュートを放つも、豪快にバーを叩く。
直後、相手のミドルシュートもバーを叩く。
個人技では相手の能力が上なので、シュートを何本も打たれる。しかし、南が当たりだして、ナイスセーブを連発。
浦安ファンは「カモン浦安」コールを続けるが、決定機は、ほとんどない。
浦安は、幡野と田宮を投入し、攻勢に出る。
相手陣内でのプレーが増えてきた。しかし、シュートまで持っていけない。
それでもおれは、他のファンに「カモン浦安」コールを煽る。
残り10分を切り、浦安ファンの声量は増す。当然だが、そこには「昇格」とか「Jリーグチームと対戦」なんて気持ちはない。同点に追いついてほしいと願うファンが大半だったと思う。
その想いは、残り8分で通じた。
幡野、竹中とパスが回り、「裏取り名人」田宮に決定的なパスが出る。キーパーとの1 vs 1を制し、同点ゴールをねじ込んだ!
浦安から遠く離れた志布志で、選手とファンの喜びが爆発。このときの、田宮の笑顔はとても印象に残っている。(チームHPのピックアップ参照)
喜びの輪が解けたところで、おれは、2014年地域決勝以来のコールを入れた。
「あと1点!」
おれは、打算抜きで「相手に勝ちたい」と思い続けていた。この時間帯は、2回戦 や 帰りの交通手段なんて、全く頭になかった。とにかく、勝ちたかった。
この後、相手が決定的なシュートを放つ場面もあったが、南はスーパーセーブを魅せる。
村田がミドルシュートを放つ場面もあったが、相手の体に当たる。直後のピンチでは村田の帰陣が早く、ボールをクリアしたシーンでは、感動すら覚えた。
志布志で、今季最高の一体感が出ている。
後半AT4分台、相手陣地でフリーキックを得る。ラストプレーなので、浦安ファンはかなりの声量で応援したが、得点することはできず。
この試合終了。2−2の引き分け。PK戦で、浦安は負けた。
http://www.jfa.jp/match/adults_football_tournament_2019/schedule_result/pdf/m16.pdf(日本サッカー協会HPより)
試合後、浦安の選手はあいさつに来てくれたが、PKで負けた悔しさとやりきった表情が入り混じったように見えた。
おれ自身も、心の中でいろんな感情が渦巻いていた。ひとつ言えるのは、「志布志まで来て、本当によかった」
そんなとき、地元に住んでいるであろう幼い少女が、おれの方に駆け寄ってくる。目線が足元のバッグに向いていた時点で、あることを察した。
バッグに付けているものを手に触れ、「例の格好をしているにも関わらず」おれに声をかけてきた。
おれはそのものが「べかひこ」という名前であることを教えた。
とても興味を示していたので、べか彦人形をあげることにした。
少女はお礼を述べたのち、「べかひこかわいい」と言って、小さい人形を抱きしめた(その直後、別の浦安ファンも少女の姉に対し、同じ行動をとることになる)。
つまり、
べか彦のかわいさは、日本中に誇れる!!
最後は、話がべか彦に逸れてしまったが、来シーズンに向けて言いたいことを、箇条書きで書く。詳しい内容は、また後ほど。
・浦安市陸で、この試合のような一体感が見たい
・難しい情勢だと分かっているが、「シーズン通じて活躍した」選手 or 「この試合で活躍した」 選手と共に戦いたい(2015年に昇格を果たしたときよりも強く想っている)
・しかし、池田晃太退団騒動のような動き(来年の主力になるであろう成長著しい選手を追い出す)があれば、チームは残留争い必至
・1番成長しなければならないのは、都並監督の采配