レイトン・オリエントFC(イングランド5部)試合観戦記
チャールトン・アスレティックFC(イングランド3部)試合観戦記
ロンドンで2試合を観戦した翌日、
おれは観光名所を巡っていた。
ロンドン橋、バッキンガム宮殿、大英美術館etc.
この日のロンドンでは、プレミアリーグが2試合行われるのに、チケットを持っていなかった。渡欧の1週間前に航空券を予約した旅行なので、致し方ない。
しかし、諦めきれず、ダメ元でスタジアム周辺に向かった。
中心部から地下鉄で15分。
アーセナルの本拠地・エミレーツスタジアムだ。
キックオフ2時間前に着いて最寄り駅からスタジアムへ向かう道中、何人かのダフ屋から声を掛けられる。
それぞれのチケットの値段を聞いてみると、今回のヨーロッパ往復航空券に近い値段を提示される。
それもそのはず。この日の対戦相手は、マンチェスターユナイテッドだ。
(法令違反だが)ダフ屋から購入したとしても、そのチケットで入場できない可能性はある。
メンバーシップ(有料会員)であったとしても、チケットを買うのは難しい「世界屈指の好カード」だ。
らちが明かないので、市内の中心部へ移動。換金所で、3万円をポンドに両替する。
両替後、キックオフ近くになった頃合いを見計らって、スタジアム前に戻る。
今度は、自分からダフ屋に声を掛けてみた。
少し値は下がったが、5万円以上する値段を言われる。
注意.この直後、とても幸運な出来事が起こる。普通であれば、ありえないので、現地に行く人は自己責任で。
スタジアム近くで2〜3人のダフ屋と一言二言話をした後、
その様子を見ていたであろう初老の男性から声を掛けられた。
「チケットがほしいのか?」と聞かれたので、値段を質問する。
すると、ほぼ定価の答えだった。しかも、センターラインに近い席だという。今もって、アジア人のおれに声を掛けてくれたのか、いまだに謎だ。
半信半疑で「もちろん」と受け答えすると、
その男性は、笑顔を見せて、足早にゲートへ向かう。
ゲートに着くと、一緒に手荷物検査を受ける。
おれは、ほとんどの荷物をユースホステルに置いたままなので、ほぼフリーで通過。初老の男性も同様。
ここで、おれは定価に近い金額を渡し、メンバーシップカードを交換する。
そして、厳重なボディチェックを受ける。ここも通過。
ゲートに到着し、交換したカードをかざすと、OKサインが出た。この辺りから、おれの気分は最高潮に達する。
スタンド裏の通路に出ると試合開始直前なので、大勢のグーナー(アーセナルファン)でごった返していた。
スタスタ歩く男性についていくと、ピッチが見えてくる。そして、おれが持っているカードに記された座席が分かった。
文句のつけようがない席である。
これが夢なら醒めないでくれ、と思った。
初老の男性には、ひたすら感謝の言葉を述べた。「中学卒業レベル」の英語を駆使して。
話を聞くと、親戚が急きょ来れなくなったため、年間チケットを現地で誰かに譲ろうとしていたらしい。
この時点で、「人生の運」を数十パーセント使った気もするが、一生の思い出になるのは間違いなし。
ほどなくして、選手がピッチに入場。
この日のスタメン。
観客は総立ちの上、拍手で出迎える。
選手を見ると、明らかに体つきが「ごつい」。3部リーグとも明らかに違う。
ごつい体つきを見ていたら、マスコットと子どもがボール回しをしていて、何だか微笑ましい。
しかし、キックオフの笛が鳴ったら、雰囲気はガラッと変わる。
総立ちの観客は、ゴール裏を除き着席。
着席したのだが、シュートまで持っていけそうな場面やレフェリーが(少しでも)おかしいジャッジをしたときは、観客が立ち上がる。ワンプレーワンプレーに対する反応が、日本では考えられないほど大きい。これは「観戦」ではなく「参戦」だ。
観客が立ち上がって、アーセナルの選手がシュートを外したときは「ウー!!」という高音を叫び、静かに座る。
セットプレーのチャンス時にも、ファンは総立ちとなる。「アーセナル!!アーセナル!!」のチームコールがスタジアムを覆う。
年間チケットの席だが、「選手と共に戦う」グーナーたちと参戦していることに、自分自身とても興奮した。
対するマンチェスターユナイテッドのサポーター席は、スタジアム全体の5%程度は割り当てられているようだ。
下の写真の1階席が、アウェイの割り当て。手荷物検査とボディチェックをかなり厳重にしているはず。
緩衝帯は全くないのだが、セキュリティは厳重であれば、特に問題ないのだろう。
おれ自身が、プレミアリーグ屈指のビッグマッチの空気に感激している間に、先制点が生まれた。
アーセナルのNo.34シャカの「無回転ミドルシュート」が炸裂した。
見事なゴールだったとはいえ、メインスタンドの観客は、ネットが揺れるまで着席していた。しかし、みんなが一斉に立ち上がる。
これまで5部リーグ・3部リーグを観てきたが、ビッグゲームでゴールが決まったときの歓声は、全く質が異なる。
歓声というよりも、ちょっとした噴火のような轟音がスタジアムに鳴り響く。
もちろん、対するマンチェスターUも反撃を試みる。しかし、アーセナル(というよりもプレミアリーグ)のプレスの質が素晴らしい。
DFラインの上げ下げも、「あうんの呼吸」だ。裏にボールが来ないとわかった瞬間、ほとんどオートマで、ラインが数m上がる。
攻撃面よりも高度な守備技術に唖然とした。
前半は、このまま終了。アーセナルがリードして折り返す。
カタコトの英語で、シーズンチケットを定価で売ってくれた男性やその周りのファンに質問をしてみた。
「初めてシーズンチケットを購入したのはいつですか?」
3〜4人から得た回答は、みんな15年以上シーチケを保有しているとのこと。
初老の男性は、10年ゴール裏のシーチケを所有したのち、15年前からメインスタンドに移ったらしい。
みんなハイベリー(昔のホームスタジアム)の頃からアーセナルを見続けているとは…
言葉はあまり理解できなくても、チームに対する愛情は感じた。何より、世界トップレベルのサッカーを見続けているので、「サッカー観戦偏差値」がめちゃくちゃ高い。
「フットボールはサポーターが創るもの」という言葉を、思い出した。
そして、後半を迎える。
グーナーは、まずますヒートアップする。
1つ1つのジャッジに対する反応も、かなり大きい。(ミスジャッジやカウンター阻止だと思ったら、観客はほぼ総立ち)
ワンプレーワンプレーで歓声が沸く。とはいっても、日本と違い「ため息」がないので、観戦していてストレスを感じない。
カウンターでシュートまで行けそうな場面では、観客が完全に総立ち。異様な雰囲気だ。
その雰囲気に押され、アーセナルがPKをゲットする。グーナーは早くも興奮状態。
このPKは、エース・オーバメヤンが決めて追加点をあげる。
スタンドの様子は、書くまでもないだろう。
2点リードとなったアーセナルは、選手交代を巧みに行う。
その度に、メインスタンドのグーナーは、総立ちで出迎えた。
選手に対する「最大限の尊敬」が表れている。
結局、スコアは動かず試合終了。2−0でアーセナルが勝利。
試合が終わった後、選手はサポーターの声援に応えながらすぐに控室へ戻る。
グーナーも、あまり余韻に浸ることなく帰路につく。
初老の男性に改めて礼をした後、お互い笑顔で別れた。
おれにとって、夢のような時間だった。
グーナー(観客)が、理想的な観戦スタイルだったので、「究極のストレスフリー」な時間を過ごせた。
スタッツ
この試合のダイジェスト
後日談:
おれは、アーセナルのメンバーシップに入会。また行ける確率は低いので、5,000円近くのお布施といえる。
19-20シーズンのチケット購入権を手にした。おれを知っている人で、アーセナルの試合を観たい方は一報を。